猛暑の真っ只中に、爆発的に売れる商品があります。
それは──ランドセル。
「え?小学校の入学は春なのに?真夏にランドセルなんて売れるわけがない」と思った方、少なくないでしょう。
でもこれは実際に起きている現象なのです。
目次
種明かし
理由はこうです。
夏休みは、孫が祖父母の家に帰省する季節。家族がそろってお出かけできる貴重な時間です。
人気色や最新モデルは秋になると品切れになるため、「あるうちに買っておこう」という心理が働きます。
そして、「孫に買ってあげたい」という祖父母の想いが、購買を後押しします。
実際、大手ランドセルメーカーの売上データでも、7〜8月が年間販売のピークという事例が報告されています。
つまりランドセルは、入学直前ではなく、「家族がそろい、購買動機が最も高まる夏」にピークを迎えるのです。
この不思議な現象には、売上を何倍にもする“商売の秘密”が隠れています。
それは──商品は“使う時期”ではなく、“買う動機が最も強くなる瞬間”に売れるということ。
同じような現象は、実はたくさんある
ランドセルだけではありません。
同じように「え?この季節に?」と意外に思うけれど、理由を知れば納得する事例は、世の中にたくさんあります。
いくつか見てみましょう。
1. 正露丸 – 真夏に薬箱の王様に
大幸薬品の調査によると、平均気温が1℃上がるごとに売上が約3.5〜5%増加。
冷たい飲み物やかき氷、そして冷房の効きすぎで胃腸を壊す人が急増し、真夏こそ正露丸の需要がピークになります。
2. 知覚過敏用歯磨き粉 – アイスの陰の売れ筋
猛暑でアイスや冷飲料を楽しむほど、歯が「キーン」としみる人が増加。
国内の大手メーカーでは、7〜8月に知覚過敏ケア商品の売上が冬季より1.3倍になる傾向があるといいます。
3. 防寒肌着 – 猛暑にヒートテック?
ある大手衣料チェーンによると、夏の冷房対策インナーの売上は年々増加。
炎天下から室内に入れば極寒の冷房──真夏でも長袖インナーや薄手の防寒肌着が売れる理由です。
4. 野菜ジュース – 猛暑でサラダ離れ
農林水産省の統計では、夏場のレタスやトマトは価格高騰率が年間最大。
その結果、スーパーの野菜ジュース売上は真夏に1.2〜1.5倍へ跳ね上がります。
5. ぬか漬け – 夏バテ食欲不振の特効薬
発酵食品市場の調査では、漬物類の販売は7〜8月に10〜15%伸びる傾向。
重い料理は避け、さっぱり食べられるぬか漬けが食卓に戻ってきます。
6. 宅トレグッズ – 炎天下よりリビングで筋トレ
大手通販サイトのデータによれば、ヨガマットやエクササイズバンドは真夏に注文数が20%以上増加。
猛暑で外出やジョギングを避ける人が室内運動にシフトしている証拠です。
7. 加齢臭対策商品 – 気温上昇とともに売上も上昇
某ドラッグストアチェーンでは、男性向け消臭・ボディケア用品が7月〜8月にかけて冬の1.5倍売れるとのこと。
汗と皮脂分泌が増える夏は、ニオイ対策の需要が直撃します。
8. 冷感詐欺商品 – 冷たくないのに売れる
「冷感素材」「ひんやり」という表示や見た目だけで購買される商品も多く、マーケティング調査では実測でほとんど温度差がない商品が売上上位に入るケースが確認されています。
9. 虫よけ線香 – 夏イベントの縁の下の力持ち
花火大会、キャンプ、盆行事で屋外時間が増える7〜8月は、蚊取り・虫よけ商品の売上が年間最大になります。
10. 冷却シート – 夏風邪や熱中症の頼れる相棒
医薬品メーカーの出荷データでは、冷却シートは夏に出荷量が冬の約1.4倍に。
高温多湿で体調を崩したときの必需品です。
さて、どう思われたでしょう?
ランドセルも正露丸も、防寒肌着も──どれも一見「夏とは関係ない」ように見えます。
しかし、売れるのは使用時期ではなく、人の行動と心理が最も盛り上がるタイミングです。
世の中には、まだまだこんな事例が無数にあります。
そして、その中には、まだ誰も気づいていない商機も眠っています。
あなたもちょっと頭をひねってみてください。
すぐ目の前に、そんな商品がころがっているかもしれません。
そしてあなたならではの「これだ!」が、見つかるかもしれません。
こうした“意外な売れ時”を見つけることこそ、商売の醍醐味であり面白さではないでしょうか。
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