名匠小津安二郎監督は黒澤明監督とともに私の大好きな監督です。
名作、「東京物語」「秋刀魚の味」「お茶漬けの味」等、さりげない日常の風景を切り取った作品は年をとるごとに、じわじわと良さがしみわたってきます。
その小津安二郎監督が、映画製作で「ワセリン」を使っていたことが判ったとニュースになっていました。
早速、「小津安二郎の東京物語等の撮影手法にワセリンが発見!」としてまとめてみました。
ワセリンの使用
ニュースで小津安二郎監督が撮影にワセリンを使用していたことが、映画会社の調べで分かったことがニュースになっていました。
判ったことは、ワセリンを使用していたということ。
ワセリンとは何でしょうか。
肌にテカリを与えるもので、常にスタッフがワセリンと綿棒を持って小津監督をついてまわっていたそうです。
撮影時の写真を見ると、当時の大スターだった原節子さん等の顔に何か塗っている写真映像が紹介されていました。
小津安二郎監督は、顔にワセリンを塗って、テカリを与えて、涙の痕や汗を表現したのでした。
女優の香川京子さんは、「東京物語」にも出演されていらっしゃいますが、当時の撮影話として涙の痕を監督自身が確かにワセリンを塗って涙の痕として表現されていたことをかたっていらっしゃいました。
完璧主義者
小津監督は、完璧主義者で有名でした。
映画に出てくる小道具、急須や湯飲みなどにも細かくこだわりを見せ、高価な本物を用意し徹底してリアルな映像を作成しようとしました。
又構図についても、シンメトリックな表現を好まれ、外の景色でシンメトリックに煙突が二本並んでいるカットとか、部屋を映したときに大きな瓶と小さな瓶が並んでいる構図など、監督の好みに合わせた徹底した画面作りが行われました。
監督の徹底ぶりは演技にも及びます。監督はむしろ役者さんに演技を要求せず監督の要求するカットをカメラに収める事を目的としました。
小津安二郎の編集技術で、高い表現性を、映画としての生命力を与えられるのです。
その小道具のひとつが、ワセリンだったわけです。
フェルメールの真珠の首飾りの女
唐突ですが、ふとフェルメールの真珠の首飾りの女を思い出しました。
かつて大きな修復が行われ、汚れが落とされた時、唇に一点の白い点の存在が汚れの中から長い時代を経て日の目を見たのです。
唇に一点だけつけられた光。
これが数々の女性像を描いた、中でも特に美しい「真珠の首飾りの女」。振り返った時の一瞬の表情を、まるで現代の写真家が捉えたようなその作品で、一点の光が浮き上がった時、その少女の美しさをよりいっそうみずみずしく引き立てたのです。
小津安二郎のワセリンによるテカリが、この時の印象を思い起こさせました。
完全主義者の小津安二郎監督が、絵として完成させる為、ワセリンを塗って表情にアクセントをつけたのでしょう。
まとめ
「小津安二郎の東京物語等の撮影手法にワセリンが発見!」として今日耳にしたニュースを見て、小津安二郎監督の完璧主義を表す新発見と感じました。
黒澤監督も妥協を許さぬ完全主義者であったことが有名です。
映像美の徹底した追及、創造者としての徹底した姿に、平凡に生きる私にも少なからず考えさせるお話でした。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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